春待人たちの願いをひとつひとつ読んで歩く。
人の願いは、こんなにもさまざまなものかと驚かされる。
私の願いはなんだろう。
願ってもすでに遅いことばかりが、浮かんでくる。
浮かぶに任せている他はないと諦めて、また日射しの中へと向かうことにする。
梅市は盛況だ。
遠くからやってきた観光客も、自転車で駆け付けた近所の人たちも、同じように目を輝かせて出物を狙う。
「あの人」も、この梅市に来ただろうか‥‥
今、私が呼吸している春の大気を、「あの人」もまた呼吸しただろうか。
もうほとんど忘れてしまったはずの、昔の顔が浮かんだ。
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