|
戻る | 北海道 | 東北 | 関東 | 甲信越 | 東海 | 北陸 | 関西 | 中国 | 四国 | 九州/沖縄 | 美味しい | お気に入り |
[表示モード | データ | タイトル | PDA] | |←最初 ・ ←前ページ ・ 戻る ・ 次ページ→ ・ 最新→| |
[188] 岩手県 盛岡 盛岡冷麺 | 2003.6.14 |
八幡平で見損ねた岩手山沿いに雫石に向かう。岩手山山麓には幾つかのキャンプ場が点在するが、その中でも「岩手山焼走り国際交流村オートキャンプ場」は素晴らしい。北海道でも駐車場を区切ったような、それでいて高いオートキャンプ場が多いが、ここのキャンプ場サイトは、隣との間は木々で区切られ、お隣さんが団地のように引っ付きあうことはない。そればかりか、各サイトには独立した炊事場と電源が備え付けられているし、夜間はカラオケ禁止。また立派な温泉も、天文台もあり、センターではキャンプ用品も購入できる。いままで数多くのキャンプ場を訪れているが、このキャンプ場は快適の一言だ。国際交流村の向いは「焼走り溶岩流」の荒涼たる風景が展開している。雫石側には大きなオートキャンプ場は少なく、昔ながらの小規模なキャンプ場を、バイクツーリングの人達が利用している 雫石といえば小岩井農場。観光客の少ない、岩手山山麓の中でも、ここだけは都会の雑踏のような混雑ぶり。大概は辟易してしまう自分だが、この小岩井農場は観光地としては良心的な所だと思った。元々小岩井農場の製品は価格の割に良質なものが多く、僕はチーズもヨーグルトもバターも、ここの製品を日常購入している。施設内は混雑はしているものの、サービスは良く、また食べ物も美味しい。ソフトクリームだけでなく、露店でのバーベキューの肉、土産店の生チョコレートからウインナまで、どれも旨い。僕は各地のウインナソーセージを土産として購入してるのだが、この小岩井農場のウインナは価格と旨さのバランスがほど良くとれていると思う。大量生産しながら、満足のいく味を引き出すノウハウが素晴らしい。那須高原の某牧場も、是非とも見習って欲しいものだ 夕方も近づき、そろそろ夕食を食べたい。地元のおばちゃんに、行きつけの美味しい冷麺店はありますかと聞くと焼肉屋の「じゅうじゅう」がお薦めだという。どうやら国道46号線を盛岡市内方面に向かう道沿いにあるらしい。しかし、教えてくれた場所にあったのはファミリーレスラン。思わず「エっ、嘘だろ」と言葉に出た。駐車場で、入るべきか、悩んでいると、店から出てくる客がいたので、さっそく感想を質問。すると、「美味しいからいつも食べに来ている」という。それではと、店に入り、カルビと冷麺を注文した。価格は東京のファミレス焼肉チェーンと、ほぼ同じだが肉はずっと旨い。そしてなによりも冷麺が旨かった。ここの冷麺、国産小麦粉を手で練り、注文があってから麺にするのだ。スープも8時間かけて作られる。キムチもかなり旨い。正直チェーン店だからと、あてにしていなかったのだが、期待は嬉しい方向で裏切られた。しかし、ここは冷麺の本場、盛岡である。やはり有名店も体験しておかねばと、盛岡駅近くの繁華街に出向くも、盛岡冷麺のルーツでもある、目的の店は新宿の歌舞伎町のような歓楽街にあり、近くの有料駐車場も満杯。なんだか食べる意欲がわかない。そこで東北道盛岡インター傍にあった「ぴょんぴょん舎」本店に向かう。この焼肉店は、なかなかお洒落で、インテリアもきれいだ。さきほどと同じく、カルビと冷麺を注文する。盛り付けは、ファミレスよりも、さすがに丁寧で美しいが、味は「じゅうじゅう」も負けてはいない。冷麺の価格はどちらも同じだが、肉は3割ほど「ぴょんぴょん舎」の方が高い。「ぴょんぴょん舎」の評価はネットで見ても悪くはない。いや、美味しいという評価が多い。だとすると、雫石のおばちゃんが「じゅうじゅう」を薦めたのも合点がいく。僕の個人的な好みからすると、「じゅうじゅう」の冷麺の味付けのほうが好みだった。「ぴょんぴょん舎」のスープは少し甘さが強く感じてしまったのだ。しかし、どちらも旨いことには間違い無い。お洒落な雰囲気で焼肉と冷麺を食べたいのであれば「ぴょんぴょん舎」、リーズナブルに満足したいのならば、「じゅうじゅう」だろう。ところで「じゅうじゅう」だが、正式名称は「焼肉レストランじゅうじゅう」盛岡店、住所は雫石だ。そして2003年6月4日に「焼肉レストランじゅうじゅう」盛岡店は「やまなか家」盛岡店に名前が変更されている。雫石から盛岡駅までは、車で約30分程度とかなり近い。また気がついたのだが、東北道盛岡インターから雫石に向かう間はラブホテル街でもあった。盛岡市民の若者にとっての雫石はデート場所なのかもしれない。確かに夕暮れの御所湖は美しい。湖を見て、夕食を食べて、そして..というコースなのだろう。最後に御所湖はモバキャン場所としても良好だった [画像を表示] | |
[189] 岩手県 雫石 国見温泉のひっつみ鍋 | 2003.6.17 |
国見温泉は岩手と秋田の県境にあり、秋田駒ヶ岳の登山口として知られている。とは言うものの、国道46号線から国見温泉への入り口は極めてわかりづらい。目印は「ドライブイン国見」。盛岡方面から向かうと、このドライブンの先から右折する山道に入る。入りそこねると、仙岩トンネルを経て田沢湖に出てしまう。渓谷を眺めながら山道を登ると、終点が国見温泉だ。森(もり)山荘と石塚旅館のたった2軒の温泉だが、この温泉の泉質は極めて良いと感じた。僕は森山荘の露天風呂に入ったのだが、まず湯の色が抹茶色の源泉で湯温は低め、1時間入ってものぼせることはない。小さな露天風呂だが、まさに眼前に広がる、開放感100パーセントのパノラマが気持ち良い。田沢湖の乳頭温泉「鶴の湯」よりもずっとずっと秘湯を感じる温泉だ。穴場中の穴場だろうなぁぁ 秋田駒ヶ岳への登山客は国見温泉で休憩するとよいだろう。温泉には無料の駐車場や公衆トイレもあるし、美味しい湧水も無料で手に入る。特に森山荘では食事もとれる。ここのお薦め料理は「ひっつみ鍋」。ひっつみ鍋は水団(すいとん)料理で岩手県の名物だ。地鶏にゴボウやシイタケで出汁をとっている。さっぱりしているが、スープの出汁はメチャ旨い。森山荘の「ひっつみ鍋」の特長は野菜の種類を多く使っていないことにある。野菜の種類を増やすと、どうしても味がぼけてしまい、狙いの味にならないのだそうだ。定食には、山菜小鉢ときのこおろしがついてくるのだが、これもまた旨い。きのこは地元で「ぼり」と呼ばれる塩蔵のナラタケ。もちろん天然モノだ。この「ひっつみ鍋」も仙岩トンネルを抜け、秋田側に入ると、なぜか全く見当たらなくなる。その代わりに「山の芋鍋」が名物となる。乳頭温泉「鶴の湯別館」で「山の芋鍋」は食べたけど、森山荘の「ひっつみ鍋」の旨さには到底敵わなかった。店構えも、運ばれた料理も、テレビ映りは良いのだが.. [画像を表示] | |
[190] 秋田県 田沢湖 田沢湖の地ビール | 2003.6.20 |
夏の田沢湖はリゾートを楽しむ客で賑わう 田沢湖をぐるりと一周してみると分かると思うが、太陽の方角と光の加減で湖水の色が、こんなにも違うものかと驚く。そして田沢湖の先に鎮座する秋田駒ヶ岳は美しい。その田沢湖の湖畔に、洒落たオープンテラスの地ビールのレストランがあった。乳頭温泉「鶴の湯別館」で田沢湖ビールのバイツェンを飲んだのだが、これがとても旨かった。だから早とちりして、このお洒落な地ビールレストランが田沢湖ビールのレストランだと思い込み入店した。しかし、どうも僕の苦手な、都会によくありがちな、お洒落なだけのレストランの雰囲気がふんぷんとしている。そしてこの手のレストランに見られる薀蓄がメニューに書かれていた..「職人ワザが光る蔵出し地ビール」、「地元農家との契約栽培」、「野菜は朝採り」、「新鮮・安全・おいしい農産物をつくりたいという気持ちは自然を愛し・守る気持ちにつながります---レストランで使用するナブキン等は出来るだけ木原料の紙ではなく、サトウキビ繊維から作られた非木材紙を使用したものにしております」、これを見て??な気持ちになりながらも、あっさり冷たい料理の「朝市仕入れ本日の新鮮盛り」1000円とデュンケルを頼んだ。出てきた料理は甘海老6匹とオクラ2本、プチトマト3個だけ。危惧はまさに的中。この時点でここが田沢湖ビールのレストランではなかったと気づいたのだ。一応この店の名誉のために..昨今の地ビールレストランの中では、ごく平均的なレベル。田沢湖を眺めながら、リゾート気分を味わうには良い店だとは思う。ちなみにビールの味は某大手ビール会社の地ビール用ブルワリーで作ったものだと直感した。熟成度がいまいち ということで、あらためて田沢湖ビールのレストランを探すと、なんと田沢湖から角館に向かう途中、抱返り渓谷に近い所にある、「田沢湖芸術村」の中にあることが分かった。「田沢湖芸術村」は民族伝統をベースとしたミュージカルや芝居を全国で展開する劇団「わらび座」の拠点である。そして芸術村には、劇場の他に、森林工芸館、温泉の「ゆぽぽ」や田沢湖ビールのレストランなどがある。彼等の伝えたいメッセージが、工房、温泉、土産からレストランまで、きちんと統一されたコンセプトで貫かれている。それは決して押付がましくもなく、そして薀蓄も殆ど見られない。温泉に浸かり、さっそく隣の地ビールレストランに入店。受付の女の子の対応も素朴で気持ち良いし、メニューもリーズナブルな価格だ。さっそくアルトと前菜の盛り合わせ、そして名物の「和牛スネ肉のビール煮」を頼んだ。ここの地ビールは、味に深味があり、本当に旨い。またスネ肉のビール煮、これがなかなかの出来だった。地ビールレストランで旨い料理には、そうそう出会えないだけに嬉しい。わらび座のポリシーなのだろう、お客を楽しませる工夫と努力が垣間見えるようだ。結局、この後、バイツェンやダークラガー、「ジャーマンポテト」や「やわらか牛タンの網焼きガーリック風味」も追加注文。デザートのアイスとコーヒーを食べ終える頃には、もうお腹は満杯。幸せな一時を過ごせた [画像を表示] | |
[191] 秋田県 角館 シンプルなラーメン | 2003.6.25 |
抱返り渓谷から角館へ出た 朝の武家屋敷はまだ観光客も少なくほっとする。あと2時間もすると、ここも人で混雑するのだろう。ざっと町並みを見学して角館の駅に向かう。角館の駅はなかなかお洒落だ。駅前には人力車の店や、稲庭うどんを扱っている食堂、地酒の豊富な酒屋、観光案内所がある。地酒を見てみよう。店内に入り、店長さんにお薦めの地酒はと聞くと、一押しは「冬樹」だという。それではと土産に購入する。後に湯沢の地酒屋で同じ質問をしたら、やはり「冬樹」がお薦めと返ってきた。湯沢は著名な酒蔵が多い。だから「お薦めは湯沢の地酒ではないのですか」と問い直すと、「冬樹」の味は新しい。東京に進出しても生き残れるだけのオリジナリティーがあると、若い店主は応えた。実際飲んでみたら、その意味を理解できた。「冬樹」は福乃友酒造が作っている。チャレンジ精神は使用している米にあった。無難な山田錦は使用せずに、なんと酒米でなく、ササニシキの系統である地元の食米「キヨニシキ」を使用している。そりゃぁぁチャレンジだわな。十四代も少し甘口だが、冬樹も日本酒度は1度だが、コクとキレ、そして酸味がある。これは確かに銘酒だ 観光案内所に入り、受付の女性にお薦めのラーメン屋さんはありますかと尋ねた。彼女はしばし考え込み「やっているかどうかは不明ですが」と一冊の電話帳を取り出し、ページをパラパラとめくり指差した。そこには伊藤清美という個人名が。「正式な店名は分かりませんが、この人がやっている店です。ただし気まぐれな営業なので、今日やっているかは分からない」という。僕は彼女に礼を述べ、電話番号を控えて案内所を出た。さっそく電話をかけると女性が出た。「今日は営業しますか」と聞くと、「やります」という。場所を訪ねたのだが、どうも彼女の日本語は少し変だ。よく分からないまま、とりあえず向かってみる。しかしどうにも分からない。仕方なく、困ったときのガソリンスタンド。給油を兼ねて「伊藤」というラーメン屋を知っていますかと訪ねるものの、最初は知らないと言われた。しかし「気ままな店らしいのですが」..と突っ込むと、「あぁぁ店の看板も何もない、普通の家のあそこかもしれない」と.. そこは住宅街だった。しかし周りを見ても、店らしいものはどこにもない。もう一度電話をかけ、女性に現在いる場所の景色を告げると、「あなたの居る目の前が店だ」という。なんとラーメン店の前で電話をしていたのだ。それほどまで、「ここがラーメン店だぞ」という気は全く発していない店だ。こういう店はきっと頑固親父がやっているに違いないと、恐る恐る店に入る 店内は10席程度のカウンターのみ。そして客は僕一人。店の人も見えない。壁のメニューを見ると、「そば500円 肉そば650円」、これだけが書かれている。僕は「すいませ〜ん」と声を出した。すると先ほどの声の女性が現れた。やっぱり日本人ではなかったんだ。電話での疑問が一挙に解けた。ブラジルの方なのだろうか、可愛らしい小柄な女性に、さっそく「そば」を注文する。しばらくすると、店主だろう、男性が「そば」を持ってきた。うわわ、予想通り、相当に頑固そうだ。確かに「そば」というだけあり、実にシンプル。具は刻みネギだけ。しかしスープから垣間見える麺は手打だぞと言っている。まずは麺をいただく。間違いなく、これは手打麺だ。佐野ラーメンの手打麺に似たふわふわ感は残っているが、もっとコシがある。佐野ラーメンの麺は頼りないふわふわ感なのだが、こちらはドッシリと座り込む存在感がある。旨い。次にやや濃い目のスープをいただく。うむむ..こりゃ化学調味料は使っていないな。その様子を店主は見ていたのか、「味はどうだ」と聞いてきた。僕は素直に感想を述べた。すると「化調は一切使っていないよ、分かるのか」と嬉しそうな顔になった。それも頑固親父から、途端に茶目っ気のある可愛らしい親父に。話を聞くと、彼は東京の有名なラーメン店にいたらしい。何があったのかは知らないが、この角館で自分の店を始めたようだ。「今、東京で流行っている店はどこだ」など、逆に質問攻めにあってしまった。彼自身の作品の目指す世界はとても高そうだ。しかし角館でこの味を理解する人達は、果たして、どれほどいるのだろうか。今まで食べたラーメンの中でも、伊藤のラーメンはかなりイケてる。食べ飽きない味の作りが好きだ。今食べたばかりなのに、お代わりしたくなる。親父、頑張れよ〜 [画像を表示] | |
[192] 秋田県 角館 稲庭うどん | 2003.6.28 |
秋田といえば雄勝郡稲川町の稲庭うどんが著名だ。稲庭うどんは機械を使わない、全て人手による手作りの細めの乾麺で、コシとノドゴシの良い上品な食感が特長だ。以前テレビで稲庭うどんを作るドキュメンタリー番組を見たが、何度も何度も麺を細く伸ばして、きれいに刻み、出来上がるまで相当な手間を要する様は、手延べ素麺の工程とほぼ同じだと思った。稲川町は湯沢の隣、栗駒山から始まる皆瀬川沿いにあり、周辺の皆瀬村はまたソバの産地でもある。現在の稲庭うどんは、地元の材料だけでなく、北海道の小麦粉、赤穂の粗塩など、素材の産地は様々なようだ。全国ブランドとなったためか、「稲庭うどん」を名乗る、県外を含む他地区の粗悪品も多くなり、ブランド維持のため、稲川町の業者15社が稲庭うどん協議会を作り、「稲庭うどん認証マーク」を導入した。その後「稲庭うどん協同組合」を設立、新たに8社が加わり、材料の共同購入や品質の維持に努めている なぜか角館では、稲庭うどんの乾麺そのものを販売している土産屋や、うどんを食べさせる店が多い。多数ある稲庭うどんメーカーの中でも、現在の稲庭うどんを作り出した稲庭干饂飩「七代佐藤養助」が最も著名だろう。直営店ではないが、僕は、角館の銘菓「なると餅」、渡辺なると餅店の女将さんお薦めの店、角館駅前の店「やまや」で「七代佐藤養助」の乾麺を使用した「冷たいいなにわ」ウドン800円を食べた。旅館も兼ねた店は、俳優の山谷初男さんの生家だとのこと。ツルツルとノドゴシもよく、すすすっとお腹の中に入っていく。旨い。1日の食事全てが米飯だと滅入ってしまうほど、僕は根っからの小麦粉好きだ。ほぼ毎日、自分で麺類を作り食べている。だから秋田で稲庭うどんを食べたいと、ずっと念願していた。「七代佐藤養助」の稲庭干饂飩の味は、とても洗練されている。上品なウドンだが、若干上品過ぎるようにも感じた。雑味がなくスッキリ感が強い。武家屋敷の「七代佐藤養助」を専門に扱う土産店で、一通りの種類の乾麺も購入してみた。稲庭うどんは手作りのため、価格は高い。約160〜180gの乾麺で500円ほどもする。ウドンの高級ブランドだけのことはある。ところで種類と価格の差はどこからくるのだろうか。例えば、お買い得の品は1本の麺を切る際に、端に近い断面がふぞろいな部分を集めたものだが、出来上がった味にさほど差はないと感じた。結局、価格の差は切った麺のサイズが、きれいに揃ったものが一番高く、バラツキの具合に応じて価格は安くなるようだ 「七代佐藤養助」以外の稲庭うどんも食べてみようと入ったのが、武家屋敷「青柳家」の中にある「延寿庵」だった。武家屋敷には稲庭うどんを扱っている店は多い。「延寿庵」自体は「稲庭手延製麺株式会社」が作る稲庭うどんのブランド名だが、この店では食事もできる。量と価格で比較すると、一番高い商品は、「七代佐藤養助」よりも実は少し高い。ままよと、メニューの中でも一番高かった「青柳家特製つけめん」2200円を頼んだ。内容は写真を見てもらえば分かるだろう。食べた感想を述べれば、洗練されているが、良い意味で雑味を残してあり、麺の味に奥行をつけている。もちろん、僕の好みはこちらだ。「七代佐藤養助」で感じた若干の不満を、延寿庵では満たされていた。食べ終え、乾麺を土産として購入する際に、女将さんに、販売している麺の種類の中で、僕が食べた「青柳家特製つけめん」に実際使用しているものはどれですかと、訪ねてみた。無体な質問だったが、女将さんは嫌な顔もせずに教えてくれた。それは一番高いものの次のランクの商品だった。一番高価なウドンは、やはり、切り口の揃ったもので、量はさほど作れず、店での需要には足りないのだそうだ。しかし、味は殆ど同じですよとも付け加えられた。自宅に戻り、一番高いもの、そして「青柳家特製つけめん」に使用したものを食べ比べてみたが、言われた通り、殆どその差は感じられなかった。最も、どちらも旨かったことには変わりはないが..ところで、武家屋敷「青柳家」の中にあるウドン店「延寿庵」だが、残念なことに僕が食べたすぐ後に店は閉じてしまった。現在「稲庭手延製麺株式会社」は乾麺の販売のみをおこなっていて、東京では三越、松坂屋、東急、京王の各デパートで入手できる。またインターネットでも直販しているのでhttp:// www.inaniwaudon.co.jp/こちらを利用するのもよいだろう [画像を表示] | |
[193] 秋田県 男鹿半島 男鹿 夏の珍味 | 2003.7.1 |
男鹿半島は。関東における三浦半島や伊豆半島のような存在ではないだろうか。手軽に出かけられ、家族で海水浴やキャンプ、温泉を楽しめ、海の幸が豊富、そして夕日が美しい 男鹿半島に来たのだからと、まずは漁師が経営している食堂に入った。そこでウニ丼と岩牡蠣を食べたのだが、正直なところ感動はわかなかった。地方の食事でよくあることなのだが、素材を巧く活かす料理の技が基本的に欠けているケースは多い。この店も例外ではなかった。日本海に夕日が没するのをうっとりと眺めた後、漁港の町北浦にある男鹿温泉に出かけた。男鹿温泉は男鹿半島の突端、入道崎から東側沿いに下ったところにあり、海岸線からは、日本海の先に白神山地も見える。この温泉街に変わったアナゴを食べさせる店「福の家」がある。どのように変わっているのか、それを確かめたくて「あなご定食」2000円を注文することにした。メニューを見ていると、夏場にしか味わえない「クロモ」という海草もお薦めだという。そこでリベンジの意味を兼ねて、岩牡蠣とクロモも頼むことにした 出てきたアナゴは普段見慣れているアナゴとは全く違った様相をしていた。ブツ切りにしたアナゴをタレにつけ、じっくりと焼き上げたものだが、身の真中に白く太い芯のようなものが見える。食べてみると、アナゴのじゅわ〜とした柔らかい身の味とは全く違って、まるで肉のモツを食べるような弾力性のある噛み味がする。マアナゴとはまるで違う食感だ。つまり普段寿司屋で食べるアナゴとは違う種類であることは間違いないだろう。主人に聞くと、このあたりではメクラウナギと呼んでいる深海魚で深さ約400mほどの磯場に棲み、このアナゴの生息場所を知っている漁師は2名しかいないのだそうだ。この話を聞いて、調理する前の生のアナゴの姿を見たわけではないが、おそらくホラアナゴの仲間ではないかと思った。ホラアナゴは北海道の根室や羅臼ではクロハモと呼ばれ「はも丼」として好評の名物料理となっている。マアナゴとは食感も味も違うが、旨いサカナであることは確かだ。珍味といえるだろう。ご主人に、このアナゴの調理方法の特長を尋ねたら、火が身全体に通り柔らかくなるまでに、かなりの時間を要するので、タレを焦がし過ぎず、風味を出し、かつ、柔らかくなるまで焼き上げるのにテクニックがいるのだそうだ さて夏場だけ食べられる珍味、クロモと岩牡蠣が出てきた。まずは岩牡蠣を食べる。さきほど食べた岩牡蠣と違い、生臭さがなく、かつ、とてもジューシーな岩牡蠣だった。今まで食べた岩牡蠣の中でも、福の家の岩牡蠣はかなり旨い部類に入る。そしていよいよクロモだ。見た目はモズクだが、モズクよりは少し太く、粘りがあり、歯ごたえも良い。味付けは一般的なモズクとほぼ同じだ。これも旨い。調べてみると、クロモの正式名称はイシモズクだった。しかし同じ男鹿半島のクロモでも、取れる地域で呼び名も味も違うことも分かった。北浦のある半島東側の磯場で採れるクロモは下クロモ、西側の磯場で採れるものは上クロモと分かれている。下クロモの方が柔らかく、藻も長い。実際北浦漁港近くで採ったクロモを干し、選別作業をしている漁師さんに出会ったが、生のクロモは一見すると天草に見えた テレビや雑誌などマスコミに頻繁に登場する男鹿半島の料理店に「美野幸」がある。「美野幸」は入道崎にあり、塩水に野菜と鯛を入れた秋田杉の桶の中に、焼いた石を入れ、一瞬の内に鍋料理にしてしまう「石焼き定食」が名物だ。こういう料理は見た目は実に美味そうに見える。パフォーマンス料理の真骨頂だろう。僕はメインの鯛よりも、定食に付いてきた漬物が気になった。見た目はスイカだ。食べてみると、瓜の仲間であることは分かった。とても旨い。そこで店の方に尋ねるとメロンだという。メロンの漬物は始めての経験だった。珍味だ。ここ男鹿半島はメロン栽培がおこなわれていて、路地でも販売している。現在「美野幸」では、このメロンの漬物は止めて、秋田名産の「いぶりがっこ」を出している。メロンの漬物は、あまりに作るのに手間がかかりすぎたのだそうだ..残念 [画像を表示] | |
[194] 秋田県 大潟 こだわりの豚肉 | 2003.7.4 |
男鹿半島から八郎潟、大潟に向かう。八郎潟は干拓地として社会科の授業で学んだ場所、一度この目で確かめておきたかった。実際訪れてみて、いまさらながら驚いた。一直線の道路が延々とどこまでも続く。しかも信号機1つもない。北海道以外の街中でこのような体験を出来るとは 大潟までやってきたのだからと、大潟に隣接している山本郡山本町の森岳温泉を訪ねようと向かったのだが、これが意外と苦戦してしまった。森岳温泉周辺にはゴルフ場や森岳温泉病院があり、この敷地が広くて、肝心な温泉街になかなか辿り着けないのだ。森岳温泉ヘルスセンターにやっと辿り着いたものの、時間帯が中途半端だったので、入浴は諦め、一路八郎潟に戻ることにした。ここは小高い丘の上にあり、寒風山から日本海の夕日まで一望できる、展望露天風呂が売りの温泉だ。施設は古いが、入浴料1000円、仮眠室1000円と安いので、自家用車やバイクの方達が割り切って仮眠するにはよいかも 山本町が日本一の「じゅんさい」生産地だと知ったのは帰宅してからだった。森岳温泉から適当に道を走っていると、進行方向にブタの看板が突然見えた。一旦通り過ぎたのだが、どうしても気になりUターン、訪れてみた。看板には「手づくりハム&ソーセージ かわい農場」と書かれている。小さな店内に入ると客は僕だけだった。ショーウインドウの中にきれいな豚肉が並んでいる。日頃スーパーで見かける豚肉とまるで違う色艶をしている。見るからに美味そうだ。手作りウインナに目がない僕は、さっそくウインナソーセージを購入、その場で1本食べてみた。これが絶妙に旨い。いままで多数食べてきた手づくりウインナの中でもトップクラスの味だった。もちろん防腐剤などの添加物は一切使用されていない。空いていることをさいわいに、店の経営者の奥様、川井紀恵子さんに感想を述べると、使用している豚について丁寧に説明をしてくれた。「かわい農場」は家族経営で、ご主人は安全で美味しい、最高の豚肉作りを目指し、黒豚であるバークシャー(母豚)、栗毛色のデロック(父豚)、そして白色のランドレース(母豚)の3種類を飼育している。ちなみに雄のデロックと雌のランドレースを交配したものが「もち豚」なのだ。飼育の餌にもこだわり、ソーセージやハムなども長期熟成させた肉を白神山麓に自生した桜のチップを使用して燻製にしているほどの力の入れようだ。なによりも驚いたのが価格。スーパー並かそれよりも安いことだ。例えば精肉、黒豚のロース100gが238円、半黒だと208円、バラ肉のスライス黒豚168円、半黒148円、各種ソーセージは100g280円、手巻きロースハム100g480円と、この肉質を考えると相当にお得な価格だ。流通を通さない直接販売だから可能なのだろう。僕はインターネットでの販売はしないのですか、と、尋ねたのだが、今のところ通販はFAXのみで、ネット販売はまだ考えていないそうだ 土産としてウインナソーセージ、荒挽きソーセージ、スモークレバーを購入したが、予想通り大好評だった。キャンピングカーでの旅のメリットは、なんといっても冷蔵庫があることだ。一般的なアウトドア用クーラーボックスの場合、中に入れる氷で容量の半分を消費してしまう。しかも途中で氷の補充と処分をしなくてはならないし、溶けた水で食べ物が濡れてしまう可能性もある。しかしキャンピングカーに搭載されている冷蔵庫は、バッテリー駆動なので冷蔵庫のスペースは全て使用できる。ビールはいつも冷えているし、生モノの土産も持ち帰れる。もっとも持ち帰る前、途中で食べちゃうこともままあるのだが [画像を表示] | |
[195] 秋田県 鳥海山 低温抽出のコーヒー | 2003.7.7 |
鳥海山には名瀑が多い。その1つ、奈曽の白滝を訪れた。階段を登りきると金峰神社があった。高さ26m、幅11mの滝とコバルトブルーの滝壷を眺める。夏の生い茂った木々の緑と湿り気が厳かな雰囲気を醸しだしている 奈曽の白滝から元滝に向かう途中、一軒のコーヒー店があった。ちょっと休憩するのもよいだろうと、立ち寄ってみることにした。店名は「珈琲屋」、ストレートな名前だ。店内に入ると、いかにもコーヒー専門店という雰囲気。そしてカウンターの中には、職人気質バリバリのオーラを発しているご主人と、ほんわか優しい人柄の女性がいた。テーブル席についた僕はメニューをまず見た。メニューの先頭は「ブレンド珈琲 \500」。下段のメニューとの間にアンダーラインが入っている。その下に続くのは、大概キリマンジャロ、モカ、コロンビア、マンデリン、ブルーマウンテンなどが普通のパターンだが、この店のメニューには「ばんじろう \600」、「マタリブレンド \600」、「キューバ \600」、「ペルー \600」、「おてまえコーヒー \600」、そして「おかわりコーヒー200円引」と書かれている。んんんんん?????こんなコーヒー名なんて聞いたことないぞ。マタリはモカマタリのことかもしれないな。しかし「ばんじろう」「おてまえコーヒー」って何なのだ。なんで「おてまえ」だけコーヒーなのだ メニューの内容が気になったものの、コーヒーではなく、わざわざ珈琲と書かれている「ブレンド珈琲」を注文した。カウンターでの作業をそれとなく見ていると、アラジンの魔法のランプのような銅製のコーヒーポット(きっとカリタの製品だろう)に金属の棒を入れたまま、じっとしている。何をしているのだろうか。コーヒー豆に湯を注ぎ始めるまでに、随分と時間が経ったように感じた。出てきたコーヒーを一口飲んでみた。通常の温かいコーヒーを予想していたので、ふいにパンチを食らったように戸惑った。「ぬるい..だけど芳醇な香りとまろやかなコクがある」。今まで体験したことのないコーヒーだった。お茶でいうところの玉露や抹茶の「ぬるさ」だろうか ご主人に感想を述べ「おかわりコーヒー」を注文した 2度目のコーヒーなので、今度は落ち着いて飲むことが出来た。そしてご主人、熊谷正さんから、この店のコーヒーの秘密を教えていただいた。それは彼が独自に編みだした「低温抽出法」によるコーヒーの入れ方にあった。そうか、コーヒーポットに入れた金属棒は湯温をチェックするために使用していたに違いない。ぬるいけど旨い。不思議な体験だった。はるか昔、僕はラジオのとある番組で「コーヒーに入れる湯は、沸騰したものは風味を壊すので85〜90度くらいが良い」ということを聞き、その後、沸騰させた湯が少し下がる程度で入れていた。しかし「珈琲屋」のコーヒーは、85度よりもずっと低めの温度に感じた。こんなに温度が低くても旨いコーヒーが出来るということは、豆の選別、焙煎方法など、かなりの試行錯誤を経て、辿り着いた技法なのだろう。ここ「珈琲屋」は鳥海山登山の方達も、よく立ち寄ることなど..お聞きしていたら、他のお客さんも、どんどん入店し始めたので、これ以上は営業に差し支えるなと、聞きたかった「ばんじろう」や「おてもとコーヒー」については残念だが、聞かずじまいで店を後にした しかし、やはり気にはなるものだ。自宅から電話で宿題の件を尋ねてみた 「ばんじろう」は、お客さんから教えてもらった、福岡県の「ばんじろう」さんが書いた低温抽出法の本、この中に出てくるブレンドと同じ比率、ブルマン6割、コロンビア2割 モカ2割でブレンドしたコーヒーなのだそうだ。ただし低温抽出法は熊谷正さんが編みだしたオリジナルの方法で入れている。そして「おてまえコーヒー」は、30gの豆をまさに抹茶をたてるように、茶筅を使い、入れたコーヒーだと丁寧に教えていただいた。最後にご主人は「珈琲屋」は現在、栗山池公園にある「くりりんハウス」に移転したと述べられた。大きな建物で、まだ未使用の部屋も結構あるのだが、是非見てくださいと付け加えられた。電話の声は力強く、そしてコーヒーへの情熱がヒシヒシと伝わってくる。次回、鳥海山に行く機会があれば真っ先に訪ねてみよう [画像を表示] | |
[196] 秋田県 鳥海山 涼を飲む 氷結生酒 | 2003.7.10 |
秋田側の鳥海山の周りには3箇所の道の駅があるが、どの道の駅にも温泉施設が完備されている。特に道の駅「にしめ」の温泉「にしめ湯っ娘ランド」は24時間営業で助かる。また道の駅「にしめ」と「東由利」には、独立した大型スーパーもあり、キャンパーにとってはとても便利だ。鳥海山を囲む、この3つの道の駅の便利さは全国の道の駅の中でもトップクラスといってよいだろう 道の駅「象潟 ねむの丘」の物産館を見物していたら、ショーケースに、冷凍された「氷結生酒」を見つけた。実に涼しげな出で立ちで美味そうだ。さっそく、係りの女性に氷結生酒の飲み方を聞いてみた。「飲むときに冷凍庫から出しておけば、徐々に解け始めるので、それをグラスに注げば、みぞれ状の生酒を楽しめます」と彼女は言った。みぞれ状の酒か、つまり酒のカキ氷というわけだ。これは試さない手はない..さっそく1本購入。夕飯も終え、後は寝るだけだったので、この「氷結生酒」を車内のベッドの上で味わってみた。こりゃゃ旨い。酒の度数は普通の日本酒に比べると高く、ウイスキーのオンザロックを飲むような濃さが良い。香りもきちんとあるし、爽やかさもある。素性のかなり良い酒であることは間違い無い。そういえば、この日本酒は、どこのメーカーだろう。瓶の周りが氷結しているので、メーカー名などは見づらかったので確認していなかったのだ。氷で濡れたラベルを読んでみると、なんと醸造元は僕の大好きな「飛良泉本舗」ではないか。アルコール度数は17度以上18度未満と書かれている。あらためて「飛良泉本舗」の住所を確認すると仁賀保町だった。仁賀保町は象潟の隣にある海岸沿いの町だ。「飛良泉本舗」って鳥海山の麓にあったのか。普段、飛良泉の純米酒を自宅傍の酒屋で購入している僕は、秋田の酒であることは理解していたが、町名までは記憶していなかった。こりゃ明日は「飛良泉本舗」に行くっきゃないな 翌朝、さっそく仁賀保を訪れてみた。町は道路も狭く、いかにも海辺の町の佇まいだ。「飛良泉本舗」は、この細い通りに昔ながらの風情を残してあった。店内に入ると、一人の女性が出てきて板の間に座った。お客は靴のまま店内を歩くが、店の方は一段上がった、板の間にいるのだ。テレビや映画で見かける、江戸時代の商店そのものの世界。僕は女性に「飛良泉本舗」はどうして海辺に出来たのですかと尋ねた。普通は鳥海山の湧水のある山側に作ると思ったからだ。すると女性は、仁賀保は鳥海山の地下水が湧き出る土地であることを告げた。そうか、愛媛の西条と同じなのか。西条は石鎚山の水が湧き出る町だ。良質な水が得られ、漁港にも近ければ運搬にも便利だ。それにしても、ここ「飛良泉本舗」から海岸までは目と鼻の先ほどに近い。秋田の田園風景の中にあるものと、思い込んでいたので、意外性に驚いた。女性に昨日飲んだ「氷結生酒」の感想を述べ、土産用に数本注文をした。すると「これを使用してください」と棒を差し出された。氷結した瓶の中に、この棒を差し込み、上からつつくと、みぞれをグラスに注ぎやすいのだそうだ 2日間滞在した鳥海山だが、一度も頂上を望めなかった。無念だが仕方ない。次の目的地、湯沢に行かなくてはならない。その日の宿泊地を東由利の道の駅に決め、夕暮れの鳥海山竜ヶ原湿原を後にして東由利に向かった。地図を見る限り難なく到着するはずだった。しかし最短ルートで選んだ道は、細く険しかった。家など殆ど無く、真っ暗闇での走行は怖かった。しかも途中、工事個所も多く、迂回させられる道はさらに細い。くねくねと曲がる未舗装の道をひたすら走るのだが、いかんせん低速。道の駅「東由利」に到着したのは既に夜8時を過ぎていた。まずはレストランに営業の最終時間を尋ねた。8時半がラストオーダーなのだが、「お待ちしているので、先に温泉にどうぞ」とありがたい返事をいただいた。道の駅「東由利」の敷地はかなり広く、温泉、レストラン、そしてスーパーや文具店、ファストフード店などを有するショッピングセンターがある。風呂も広く気持ちよかった。この道の駅の名物は「フランス鴨」だ。レストラン「やしお」ではフランス鴨料理を手頃な価格で食べられる。フランス鴨ラーメンも気になったが、僕は柳川風に調理した、やしお定食1000円とフランス鴨の刺身500円を注文した。何よりも嬉しかったのは、あの「氷結生酒」が置いてあったことだ。この後は寝るだけなので、もちろん注文する。出てきた氷結生酒には、冷えたグラスと伴に「飛良泉本舗」でいただいた棒がちゃんと添えられていた。嬉しい配慮だ。フランス鴨の柳川風も刺身も、どれも旨い。殆ど9時近くに入店したラストの客の僕に、嫌な顔1つせずに、心地よい接客をしてくれる。これ本当に道の駅のレストラン??。気持ちの良い時間を楽しめた ところで、この旨いフランス鴨は道の駅の西、台山地区で飼育されている。通常スーパーなどで市販されている合鴨は、北京ダック系と交配したイギリス産チェリバリー種だが、ここ東由利で飼育されているフランス鴨はフォアグラ用の鴨でもあるバルバリー種で、ヒナをフランスから輸入、飼育している。この第1世代の成長した鴨が産んだ卵をかえし育てた第2世代の肉を加工したものが、東由利のフランス鴨肉だ。バルバリー種はチェリバリー種と比較して体長は大きいのだが、肉質は柔らかく、臭みも無く、そして繊細な味がする。鳥海山に来たら一度立ち寄ると良いだろうと、述べたいところだが、この道の駅「東由利」、鳥海山からは、結構距離があるのでご注意願いたい [画像を表示] | |
[197] 秋田県 十文字 十文字ラーメン | 2003.7.14 |
早朝の道の駅「東由利」を後にして湯沢に向かう。ほどなく十文字町に入った。十文字と聞くと、反射的に美信とつぶやいてしまう。十文字美信..僕の好きな写真家だ その時、バックミラーを見ると..なんと鳥海山が見えている 2泊3日滞在した鳥海山では山頂は全く見えなかったのに..すぐに田んぼ道に入り込み、車を停めて鳥海山を眺めた。山頂に雲は無い。現在6時半。あと1、2時間は持つだろうか。地図を広げてみる。ここから鳥海山に戻るとすると湯沢、雄勝を経由してのコースが最短のようだ。とりあえず道の駅「おがち」まで行ってみよう。到着したのは7時半だった。まだ天候はくずれていない。決心して鳥海山竜ヶ原湿原に向かったのだが、県道から猿倉温泉に入る頃には、また鳥海山の頂上は雲に包まれそうになってきている。なんてこった。奥山牧場に到着したのは8時半。かろうじて山頂の見えるカットを撮影。竜ヶ原湿原に到着したのはちょうど9時だった。雲はあるものの、湿原の道の先に鳥海山の山頂が見える。ふりだしに戻ったわけだが、やっと鳥海山をこの目で見ることが出来た。しかし雄勝から鳥海山は予想よりも近い。道が整備され、また車の数も少ないためか、雄勝から1時間ほどで竜ヶ原湿原に辿り着ける。昨夜は道の駅「東由利」まで2時間近くかかったのに 戻ってラッキーだった。今回の旅では諦めていた法体の滝にも立ち寄ることが出来たからだ。法体(ほったい)の滝は、さすがに鳥海山の観光地だけあり、人も車も多い。時刻もちょうど昼になったので、茶店で蕎麦をいただくことにした。ざるそば800円と少々高いが、目の前でそばを打っている。手打なのだ。半日ほど予定が狂ってしまったが、嬉しい誤算だった 今日の予定を再考してみようと、再度道の駅「おがち」に戻る。秋ノ宮温泉と川原毛地獄は立ち寄りたい。これから先は山の中に入ることになるので、ガソリンを満タンにしておかねば。立ち寄ったスタンドでは毎度の食事処情報もしっかりと聞き出す。僕の質問は毎度決まっている。店員の方をつかまえて「あなたが利用している、お気に入りの店を教えて欲しい」と切り出すのだ。すると十文字町にラーメンの美味しい店があるという。どうやら雄勝、湯沢周辺では十文字町のラーメンは有名らしい。細い縮れ麺にあっさりとした魚ダシのスープが特長なのだと。僕は2軒の店を教えてもらった。その後すぐに104番で店の電話番号を控え、店に電話をかけると、教えてもらった1軒は定休日のようだが、もう1軒の店はやっていた。閉店時間を確認すると7時頃がラストオーダーだという。なんとかなるだろうと、秋ノ宮温泉から川原毛地獄に向かったものの、川原毛地獄に辿り着いたのは夕方5時を過ぎていた じっくりと見物する時間など既に無い。翌朝再訪することにして、一路十文字町を目指すことにした。しかし山道である。泥湯温泉に到着したのが5時半。ここから十文字町まで1時間半で辿り着くだろうか。しかも十文字町の地理は全く知らない。迷ったらアウトだ。途中、湯沢で店に連絡を入れ、向かっている旨を伝えておいた。既に6時は廻っている。十文字町の駅を目印に定休日ではあるが、目印の「丸竹食堂」を探す。目指すラーメン店「三角そばや」は「丸竹食堂」の路地を入ったところにあるという。目印の店を見つけ「三角そばや」に到着したのは6時40分だった 滑り込みセーフ。店内は昔ながらの典型的な食堂で、電話で対応してくれたおばちゃんは、とても素朴な方だった。壁にかかっているメニューを見ると「中華そば」550円、「チャーシューメン」650円、「中華そば 中盛」700円、「チャーシューメン 中盛」800円、「中華そば ダブル」800円と書かれている。僕は「中華そば」550円を注文した。出てきたラーメンは懐かしい三多摩のラーメンによく似ている。細麺のちぢれ麺の上にシナチク、ナルト、海苔、チャーシュー、刻みねぎ、そして麩がのっている。三多摩ラーメンには麩はのっていないが、見た目はまさに三多摩ラーメン。スープを飲んでみる。あっさりとした魚ダシの味がする。煮干やカツオ節、鶏ガラを使用しているんだろうなぁぁ。化調の味も殆ど感じない。旨い。こりゃゃ昔懐かしい三多摩ラーメンそのものだよ。もっとも三多摩ラーメンの多くは化学調味料も入っていたけど.. ところで現在、東京で流行っている魚ダシの有名店とはいえば、武蔵だろう。武蔵は今でこそ有名店になったが、僕は青山店がオープンしたての頃、当時小学館DIMEの編集をしていたNさんから、無化調のサンマダシの店として紹介され、すぐに訪ねてみたことがある。まだ行列など皆無の頃だ。一口スープを飲んだ感想は、こりゃやりすぎだろう。昆布ダシがメチャクチャ強すぎるのだ。これだけのダシをとれば化調バリバリよりも、さらにインパクトがあるのは間違いないが、繊細なスープの味わいとは無縁だ。店もオープンしたてということもあるので、数ヶ月おいて再訪してみたが、結果はほぼ同じだった その後、武蔵は大ブレークするのだが、この頃から僕は、最近のラーメン店に疑問を持つようになった。今の若者は亜鉛不足からくる味覚障害があるのではないだろうか。二郎も三田の本店で食べていた頃は雑誌にも殆ど登場していない時代だった。むろん支店などなかった。確かに当時の二郎もインパクトはあったが、それはトンコツスープの良い方向でのインパクトであり、千駄ケ谷のホープ軒のトンコツスープに通じる、東京トンコツラーメンの範疇だと思った。しかし八王子野猿街道に二郎がオープンして、すぐに食べに出かけたのだが、僕の記憶の中の二郎本店の味とは大きく違っていた。それはインパクトだけを全面に押し出した味つけだった。しばらく本店にはごぶさたしていたので、ひょっとしたら、昨今の若者の嗜好にあわせ、味付けも大きく変わってしまったのかもしれない。しかし、どう贔屓目に見ても、繊細な味とは無縁の世界。このようなインパクトだけを今後のラーメン店が目指しているとすれば、それは経営的には相当にシンドイものになるだろうことは、すぐに予想される。良い意味での「晴れ」の味は歓迎するのだが インパクトのある味は飽きやすい。毎日食べる常連客を獲得するのは至難の技となり、マスコミに取り上げられている期間しか顧客は望めないと思うのだ。反面、ここ「三角そばや」のラーメンは毎日食べても、食べ飽きない工夫がなされている。きっと都会の若者たちには不評かもしれないな、と、思ったが、この店のポリシーの方が経営的には正しいなとも思った。地方で店を経営するには、地元の常連さんの生活の中に入り込まねば生きてはいけない。地方だけではない。僕は都会でも同じだと思う。そんな印象を持ち、店を後にした。次にスーパー2軒に立ち寄ってみたところ、1軒目の「ふじや食品」には林泉堂の「十文字ラーメン」が売られていた。「十文字ラーメンか..東京のマスコミやラーメンサイトでも見かけたことはないなぁぁ」。しばし見ていると、そのラーメンを購入しにきたオバチャンがいた。かなりの数を購入している。僕はオバチャンに、「ずいぶんと購入されてますが、このラーメンは美味しいのですか」と尋ねた。すると、オバチャンは「東京にいる娘に送る」のだという。生まれ育った十文字を思い出してもらいたいからだそうだ。そうなのだ。これこそが店とお客の望ましい関係なのだ。愛される味は、その人々の人生の味にもなる もう1軒立ち寄った大型スーパーでは、なんと、さきほど食べた「三角そばや」のラーメンが販売されていた。1袋350円。そしてチラシも手に入れることが出来た。チラシは「湯沢店」オープンの知らせだった。大型店だ。既に横手店もあることも分かった。これは予想外だった。僕が入店した、さきほどの「三角そばや」は、おばちゃんが経営する、いかにも町内にある小さな食堂だ。しかし、実際は大きく違っていた。大型スーパーに卸すほど、商品の企画力と、さらに大量生産する施設を持った近代的な経営をしていたのだ。僕は土産として林泉堂と三角そばやのラーメンを購入した。帰宅して食べ比べてみたが、どちらも美味しかったが、価格の差もあるが、三角そばやのラーメンは、店で食べた味をかなり近く再現できていた。東京のマスコミやラーメンフリーク達はインパクト、インパクトと叫んでいるが、普通の人達は、この三角ラーメンのように大量生産にも関わらず、食べ飽きない味を支持するのではないだろうか。今後ラーメンチェーン店が成功するとした場合、「吉野屋の牛丼」のように濃い味付を意識的に避けた、あっさり味のラーメン店が繁盛するだろう..とその時に予測したのだが、2003年、それは現実となっている。東北で誕生したラーメンチェーン「幸楽苑」は、なんと東証の一部上場を果している。「毎日食べても食べ飽きない味をコンセプトとしている」と日経ビジネスで「幸楽苑」の社長は述べていた。やはり実行している人はいたのだ 僕が十文字町に訪れた、その後、東京で最も有名なラーメンサイトの主催者さんは、この「三角そばや」や角館の「いとう」に訪れ、どちらの店もかなりの評価をされていた。この頃を境に様々なラーメンサイトで「十文字ラーメン」を見かけるようになった。今では「三角そばや」は行列店となっているようだ。最近の讃岐うどんのブームもそうだが、うどん好きの地元の人達にはメリットはない。ブームに合わせての便乗ビジネスも出てくるだろう。なんとも難しい問題だ [画像を表示] | |
|