空が少し赤らむ頃、ようやく小さなフェリーが到着する。 帰りの客は多い。 けれど今から島へ向かおうという酔狂な観光客は私だけだ。
降り立った日暮れの島には、何もない。人陰さえない。 この夕日が見える広場は、唐十郎の状況劇場が全国をキャラバンする時に、最初の場所として使われてた場所。 今はどうかわからない。 「あの人」はこの夕日を見ただろうか‥‥ 私の中に、向かう場所のない問いかけが、また蘇った。
能古島の夕景