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LIN001

岩間の花

初心者ひとりでは、やはり暗く、慣れていない道筋は不安だ。

水と草花が歌い上げる。言葉のないきれいな詩を心のよりどころに、慣れた人の背を確認しながら行く。

沢道2

時折、先頭に立ってしまうこともあったけれど、その時は、沢の石に座って人が来るのを待つ。

赤や黄色の道順のテープを見つけることさえ不案内な私だから、それくらい慎重でいいのだ、と自分を納得させつつ。

エンレイ草

そんな心境で人待ち顔をしていると、図鑑の写真で見た時は取り澄ましているように見えた貴婦人のエンレイ草も、くすくすと私を笑っているように思えて、かなり照れくさい。

けれど、山では、山のものたちが主人公なせいか、普段より、たくさんのメッセージを受け取ることができるように思えて、笑われてもなんだか嬉しかった。


さあ、もうじき、空の見える場所だ。
私は、少し重くなった腰を伸ばして、また歩き始めた。


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