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夏の終わりの富士登山

 前回の連載で、「富士山の五合目まで 行ったけど、混雑してたからそのまま駐車場ぐるっと回って下りてきた」と書いた。 そのときには今年登るなら9月に入ってからかなあなんて思っていたんだけれれど、 8月末にタイミング良く富士山のライブ映像を流しているwebのオフの企画があった ので、これに便乗して富士登山を楽しんできた。

 土曜日の午前4時に富士宮新五合駐車場に集合とのことだったが 、前回の経験からそんな時間に五合目に着くようでは余計に2kmも3kmも歩く羽目 になるに違いないと思って、1時前に五合目に到着した。それでも駐車場は満員で、 誘導されて車を停めたのは駐車場のすぐ手前の路側。ちょうどそこは誘導灯がグルグ ル回ってえらく明るいところで、ここで寝ようと思っていた僕にとってはちと環境が 悪いけれど仕方がない。下に停めて歩かなくちゃいけないことを思えばずっといい。
 10年くらい前は、お盆を過ぎれば朝到着しても十分駐車場に停 められたような記憶があるんだけどねえ。やはり最近登山者は増えているのだろう。


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九合目からの日の出 1998.9.4 LML


 この時間に着く人たちは頂上・・そこまでたどり着けなけれ ばせめて八合目、九合目で日の出を見たいという登山者で、車を停めるともうすぐに 支度をして歩き出している。今日は月が明るくて今の時間でもライト無しで登れるく らいだ。単独なら行ってしまうところだが今日は4時まで大人しく寝よう。僕は車の シートを倒して横になった。シュラフを持ってきたけれど、それが必要じゃないほど 今日は暖かい。

富士宮登山道を行く

 富士山の登山道は、この「富士宮口」の ほか「吉田口」「須走口」「御殿場口」がある。もっとも利用者の多いのが山小屋の 充実している「吉田口」だが、この「富士宮口」は山頂までを最短距離、最短時間で 登れる登山道として人気がある。新五合目の駐車場から山頂の一角「浅間神社奥宮」 までは4〜5時間。そこから3776mの絶頂、剣ケ峰まではすぐだ。

 メンバーは9人。うち4人が子供である。子供たちのなかにはかつ て富士山に挑戦したが途中で挫折という経験の持ち主もいて、今流行の言葉で言うな らば今回の富士登山は「リベンジ」だ。  富士山は登山コースとしてはさほど大変 なコースではないのだが、なにぶんにも標高が高い。空気の薄さは体へのかなりの負 担になり、これが体の小さい子供を結構苦しめるのだ。それに子供ってのは「ゆっく ーり、ゆっくーり」という歩き方をするというのが難しいからか、どうしても激しい 行動になりがち。だからますます負担が大きくなる。

 登りはじめて1時間も経たないのに一番年少の男の子はなんだか グロッキー気味。おとうさんが騙し騙し登らせているような感じで少し不安。そのお 兄ちゃんは先頭を行くくらいに元気。女の子二人も着実に登っている。とりあえずこ の3人は、ひどい高山病の症状が出さえしなければ大丈夫だろう。

 途中でwebの仲間が3人合流。パーティーは12人となった。下界 は雲海の下だが山は快晴。さっきまで山頂にまとわりついていた雲はいつのまにか無 くなっていた。

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富士宮口登山道
1999.8.28 六合目付近 LML



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富士宮口登山道
1999.8.28 八合目付近 LML
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防風体勢
1999.8.28 富士山頂 LML


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遥かな山頂を振り返る
1999.8.28 宝永山 LML


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富士宮新六合へ下山
1999.8.28 宝永火口―新六合間 LML

砂ぼこりの山頂

 12時頃。全員無事浅間神社奥 宮に到着。風が強い。もう閉まっている山頂郵便局の建物の影に身を寄せるようにし て座ったけれど、それでもときおり風で舞い上がった砂が僕らを襲う。うへぇ〜、コ ーヒーを入れたカップも砂だらけ。口の中も砂だらけ。こういう状態ってのは意外と 他の山にはないような気がする。
 甘く見ていたのがカメラで、この砂ぼこり のために一時操作不能に陥ってしまった。砂はかなり細かい粒子もあり、カメラやレ ンズの僅かな隙間に入り込んで悪戯をする。皆さんも、もしカメラを持って登られる 場合には注意されたい。

 ほとんどのメンバーが剣ケ峰まで往復。戻ってくると、なんと尺 八と琴(もちろん大正琴などではなくフルサイズの)をもって上がってきた一行と遭 遇。実は登る前にその情報は得ていたのだが、琴までもって登るのだとは知らなかっ た。浅間神社の前で揃って記念写真。尺八組はこれから剣ケ峰まで登って演奏をする のだという。それを聞けないのはちょっとばかし残念だけれど、ぼちぼち我々は下ら なければ。



下山

 下山は御殿場口へ。御殿場口では昨年大 きな事故があって人が亡くなっている。山頂直前で大きな岩の落石の直撃を受けたの だ。その現場付近からは依然として大きな岩がこちらに迫ってくるように見え、やは り少し怖い感じがする。あんなデカイ岩が落ちてきたらもうどうすることも出来ない だろう。
 登りの登山者とはもうあまりすれ違わない。七合目付近からは砂走 の登山道となりで快適。途中御殿場登山道に別れを告げて優美な砂の曲線美を見せる 宝永山方面へ。このあたりから山頂付近を見上げると、こんなに登って(下りて)き たのかぁ〜と改めて思う。

 火口へと吸い込まれるように下りるともう富士宮口六合目までは すぐだ。


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秋を告げる花

 富士山は標高が高くて登るのは気持ちがいいのだけれど、五合目からの登山だと植 生が極めて乏しい地帯を歩くことになる。だからちょっと欲求不満だ。もちろん五合 目より下は樹林帯であったり草原になっているところもあってそれなりに楽しめる。 でも、その話はまたの機会にするとして、富士登山の翌日に僕が出かけたのは大菩薩 峠。

稜線一杯の花束
1999.8.29 大菩薩峠 LML


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 秋を告げる花として、あまりにもメジャーなのがマツムシソウ、とは言っても結構 暑い頃から咲くのだけれど・・・、ちと秋風が吹き始めてから眺めるほうがやはりそ れらしい。大菩薩の稜線には草原が広がっており、ほかにもアキノキリンソウやハハ コグサ、ワレモコウ、ツリガネニンジンなどが風に揺れていた。

マツムシソウ
1999.8.29 大菩薩峠 LML


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    富嶽仙人
     昭和38年生まれ
     富士宮市在住
     信州大学在学中に山と自然と写真に目覚める。
     富士宮市に移住後も富士山を主たる対象として写真活動を継続中。


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