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point_f5.gif春の富士山 point_f5.gif

春先の富士

 今年の冬はいつになく富士山の積雪が少なかった。例 年なら1月中半ばにどか雪が降って、そのあとはたいてい真っ白な富士山になるのだ けれど、今年は一年でもっとも寒さの厳しい2月になっても、そして3月に入っても 富士は相変わらず蒼い地肌を晒しているばかりであった。雪は降るには降るのだが、 それががっしり富士山の表面に着く前に強風に煽られて飛ばされてしまうようなのだ 。山麓から見ると風の方向にまるで箒で掃いたように雪が消えてなくなっているのが わかる。富士山麓を訪れるカメラマン諸氏はまるで冬の様相ではない富士を前にして さぞかし不満だっただろう。僕もいつもの年に比べるとフイルムを使う量がいくらか 少なめだったような気がする。

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小山町からの富士山 1999.4.17
冬の間の雪不足が嘘のようにたっぷりと雪の積もった富士山。


狩宿の下馬桜 point_f2.gif 狩宿の下馬桜

突然の雪化粧

 雪が無いなあと思っている間にいつしか梅の時期も 過ぎ、例年より少しはやめに桜が咲きだした。「なんでぇ、桜なんて通俗的な・・・ 」とか思いつつも追いかけてしまうのが愚かなカメラマンの性である。まずは通勤途 中の道沿いにあるマメザクラ(フジザクラとも呼ばれ富士山麓に多い)が咲いて、お っ、そろそろか・・と思い、その後自宅近くのソメイヨシノが花開くと、もうそわそ わしていても立ってもいられなくなる。

 そうしたら今度は雪だ。さすがに市街地まで降ったわけではないが、下界に降る雨 も結構冷たく、富士山五合目以上は完全に雪。富士宮からみると富士山の右側中腹に とびだして見える宝永山の下まで真っ白に被った。そして日をおかずして降る降る、 積る積る。いままでの雪不足の帳じりを合わせようとするかのような降りっぷり積も りっぷり。遠めに見てもこってりと積もった雪の厚さがわかるくらいだ。

 で・・、桜の方は早すぎる開花に気合いが間に合わず少々アタフタとはしたけれど 、ちょうど市街地で桜が咲きはじめた頃にそんなふうに寒い日が続いたから、結局は 平年とさほど変わらない状態になった。おかげで花が長く楽しめたからあの冷え込み にはちょっぴり感謝だったのである。
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土筆  春の光
1999.4.7 富士宮市田貫湖
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 桜と富士
 1999.4.7 富士宮市大石寺
 富士宮随一の桜の名所




990204.jpg  狩宿の下馬桜(去年)
 樹齢1000年とも言われる
 シロバナヤマザクラ

桜と富士山

 さてさてこの時期、休日ともなると富士山との組み 合わせで撮りやすい場所、例えば富士宮市内の大石寺界隈にはお花見客に混じり大勢 のアマチュアカメラマンがどっと繰り出す。桜の満開に合わせるように富士山がお化 粧し直しちゃたからモー大変である。ただでさえ雪不足で欲求不満だったカメラマン がじっとしているわけはないのだ。でも、僕は、そういった押し合いへし合い状態の ところは好みではないので、今年は「おー、いるわい、いるわい」と眺めるだけにし た。といいながらもほっておけずに実は平日の朝にしっかり撮りに出かけた。まあ、 この辺が地元の強み・・・だが、その撮影結果は話したくないほどの見事な失敗、大 泣きモノだった。


 

狩宿の下馬桜

 富士宮市内でみかける桜の多くはソメイヨシノ。しかしこ のソメイヨシノは江戸時代末期に江戸駒込の植木屋が品種改良してつくったというこ とで歴史は浅い。だから当然古木、古樹などといわれて有名な桜はソメイヨシノでは ないのだ。ここ富士宮市にも天然記念物に指定されている桜の木がある。「狩宿の下 馬桜」と呼ばれる巨木がそうだ。白糸滝の近く、源頼朝が富士の巻狩の折りに陣をと った井出館の前にあって、その幹に馬を繋いだといわれている桜である。これは白花 山桜。樹齢は千年ともいわれており、かつてはもっと大きな樹だったそうだ。最近は かなり樹勢が衰えてはいるものの、なかなかどうして見事な花を見せてくれる。何年 か前までは夜中の間ライトアップをしていたが近ごろは樹に良くないということで控 えているらしい。何と言っても高齢者、早寝早起きさせてあげないといけない。
 今年はちらほらと咲きかけたころにちょっと寄っただけで、残念ながら満開の時期 は逃してしまった。4月の10日から数日が見頃であったのだろう。左の写真は昨年 のものだ。


狩宿の下馬桜 狩宿の下馬桜 狩宿の下馬桜

富士五湖

 さて4月の半ばには桜前線は富士五湖に到達。河口湖北 岸等ではこれまた凄い人出になる。ただ今年は週末の天気の悪さが記録的に続いたそ うで、河口湖の桜が満開を向かえた週末も天候は今一つだった。まあ、富士山と桜を 合わせて撮ろうと思うから天気が気になるのであって、桜だけを眺めるにはさほど天 候は関係ない。実際には雨の日の葉桜なんていうのは極め付けに美しいもののひとつ だと思う。もっとも桜だけを眺めに河口湖くんだりまで出かけることはないわけでは あるけれど。

 そんなこんなで、今年もいつもの年と同じように4月を過ごしてしまった。毎年な にやってんのという感じだが、近場で安上がりに過ごそうと思うと結局のところこう なってしまうのだ。しかしそうはいっても、2、3日後にはたっぷりとフイルムの現 像代を払わなければならないから、本当はちっとも安上がりではないのであった。
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    春の雨
   1999.4.10 上九一色村
   下界では桜も」散ってしまったが
   峠にはまだ梅の花が残り
   桜の色と鮮やかなコントラストを
   みせていた

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1999.4.25 富士宮市
富士山はまだまだ豊富な残雪に被われている。右は愛鷹山。



point_f2.gif 狩宿の下馬桜 point_f2.gif
富嶽仙人
 昭和38年生まれ
 富士宮市在住
 信州大学在学中に山と自然と写真に目覚める。
 富士宮市に移住後も富士山を主たる対象として写真活動を継続中。
      
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point_f2.gif Copyright 富嶽仙人 point_f2.gif