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point_f2.gif冬の富士山 point_f2.gif

カメラマンと冬富士

 富士山を撮るようになってから冬の休日は富士五湖方面に出かけることが多くなった。もともと僕の住んでいるところが富士山麓だから、富士山麓360°どこへ行くにもたいていは一時間もあれば着く。一月も何回か出かけた。今年の富士山はことのほか雪が少なく、写真写りは今一って感じだったけれど。

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1999年1月9日の三ッ峠山からの富士山
この日はちょっぴり雪降って、三ッ峠山も富士山も薄化粧。


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 ここ数年、富士山麓に集うカメラマンの数が急激に増えているような気がする。僕が富士山麓に住むようになって丸10年。富士山の写真を撮るようになって6年だから、「最近」などと言える立場では無いのだけれど、それでもそう感じるほどだ。集まるカメラマンは中高年の男性が多く、最近「写真」をはじめたという方も多いようだ。それでも皆さんお持ちのカメラ機材はたいそう立派なプロ級のモノばかりである。
 好きな人はもう車の中で泊ってずっと居るらしいし、毎週毎週東京あたりから通って来る人もいる。というのは、一般的に富士山というのは一日撮れば良いのではなくて、最良の状態になるまで何度も通い、そして待たなければならないということが常識になっているからなのだ。
 で、お正月などはその数もピークで撮影名所は場所取り戦争となる。僕はそんなピークのところは避けるので極限状態の「戦争」の実態は知らないが結構凄いらしいのだ。たかが写真になんでそうカリカリくるのだろうと傍目には思ったりするのだけれど、遠方から来ていれば致し方のないことか。

撮影ツアー

 それに加えて近ごろ目立つのが、大型バスを仕立てての撮影ツアーだ。東京からはもちろん、もっと遠方からの場合も多いようだ。バスが止まると機材の入ったリュックを背負い、大きな三脚を担いだアマチュアカメラマンがぞろぞろ降りてくる。女性も数多い。
 これらのツアーにはプロか、あるいはセミプロ級の指導員(添乗員というのか?)が同行していることが多いようだ。この案内役は、いわゆる現地添乗員のようなカタチで雇うケースもあるようで、小耳にはさんだ話では地元アマチュアカメラマンの定年退職後の格好のアルバイトになっているようだ。僕も月に一度くらいならやってもいいかなあなどと思ったりもする。お客さんの年齢層が高そうというのが難点(なんでだよ)だけど。

夜明け

 カメラマンの集うピークの時間帯が夜明けだ。日の出の一時間以上前からカメラマンは撮影地点に三脚を立て待機する。厳冬期のこの時間、富士五湖周辺では氷点下15°以下になることもある。まだ暗いうちからあちこちでシャッターの音が聞こえる。ドラマチックな夜明けの始まりだ。
 富士山を見たことがある人は多いだろうが、この夜明けの時間帯の色彩の変化の様子をご存知だろうか。刻一刻と変化するそれはまあナカナカに美しいものなのである。雲が出て、それが染まれば、これはもう最高である。カメラマンは皆そのチャンスを追い求めているのだ。
 カメラをお持ちでなくても、もし機会があったら少し早起きをして夜明けの富士山を眺めて欲しい。いや富士山でなくてもよいのかもしれない。普段の生活の中でほんの少し早起きして街や空を眺めてみると、思いがけない素敵な風景に巡り合えるかもしれない。

慌ただしい朝

 夜明けの撮影が一段落するとカメラマン達はすばやく機材を撤収し次の場所へと移動する。ある者は別の湖へ、ある者は別の峠へ。なかには二回目の日の出を撮ろうと移動する者もいる。日の出が何回も楽しめる、これもまた富士山の写真の面白さの一つといえる。
 要するに、太陽が富士の裾から上がる時間と太陽が富士山の山頂から上がる時間には一時間以上の差があるので、その時間内に上手く移動することによって何度も日の出を楽しめるのだ。富士山の北側の精進湖で7時に日の出を見たあと、西側の上九一色村で8時過ぎに山頂から昇る朝日が見られるわけだ。  日の出に限らず、この時間帯は刻々と風景の表情が変化するのでカメラマンはとても忙しい。雲が虹色に輝く「彩雲」という現象が現れるのもこの時間帯だ。
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朝霧高原 朝焼け
太陽は富士山の後ろにある。
雲が紅く染まる



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朝霧高原 日の出
朝焼けがすっかり終わって、
もう20分以上は経っただろうか。
ようやく太陽が山頂から昇った。
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雪の無い富士山

 一番はじめに書いたけれど、去年の暮から今年にかけて、富士山にとっても雪が少ないという状態が続いた。例年ならば少なくとも一月始めには大雪が降って、冬富士らしくなるのだけれど、今年はそうならなかった。
 特にひどいのは南から南西面で、こちらは普通でも雪が少ないところへもってきてこの状態だから、ほとんど雪が無くなってしまった。何度か降雪はあったものの強風で飛ばされてしまうためか、さっぱり積もらないのである。梅の花もほころぶという季節に雪がない。珍しいんだけど、寂しい。
 その後2月11日に降雪があり、どうにかこうにか冬富士の姿になったが、それでも例年に比べれば雪は少ない。
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富士川町岩淵 1999.1.10
冬なのに雪の無い富士山は
何だかしょぼくれた感じで
青空に紛れて小さくなっていた。 
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富嶽仙人
 昭和38年生まれ
 富士宮市在住
 信州大学在学中に山と自然と写真に目覚める。
 富士宮市に移住後も富士山を主たる対象として写真活動を継続中。
      
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