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point_f2.gif僕と写真と富士山とpoint_f2.gif

僕と写真と富士山の関わり

 随分涼しくなった。これからの季節、窓から富士山が見える日がぐっと増えるはずだ。冠雪ももうすぐだろう。ここは富士山麓の町、富士宮、目の前には富士山、その山頂までの距離およそ30km、肉眼で気象庁富士山測候所のドームも見える。僕がここに住んで10年になる。
 もともとここの生まれではないし、好んでここを選択したわけでもない。よく富士山が好きで富士山麓へ移り住んだという方がいらっしゃるが、そういうのとは根本的にちゃーうのである。サラリーマンの常で自分の意志とは関り無くここに住むことになっただけなのだ。目の前の富士山は日本一高く、間違いなく日本で一番有名で、日本で一番愛されている山。もちろん最初はすげー景色だなあと思いはしたけれど、数年の間、基本的に僕はこの山が好きにはなれなかった。誇らしげにそびえ立つ、高く、美しい姿に反感を感じていたのかもしれない。なにをかくそう僕は嫌な性格なのである。
 写真はここに移り住む前の学生時代から撮っていて、主な被写体は信州の山、自然。毎日富士山を目お前にしてもそれを撮ることはせず、信州に足繁く通った。でも社会人の常で、そのうちに足は遠のきはじめ、そしてしだいにカメラを持つことも少なくなってしまった。
80901.jpg  冬のある日、夜明け前、車を飛ばして本栖湖へ。星、ゆっくりと鮮やかな色変化。朝焼け、流れる雲。見たことが無かった富士の姿がそこにあった。いままで逃げていたかもしれない。目をそらせていたかもしれない。卑屈になっていたかもしれない。僕はその日、始めて富士と向かい合ったような気がした。
 ほどなく大型カメラ(昔写真屋さんが、黒い布被って写真撮ってたでしょ、あれです)という、富士と相対するのに不足の無い道具も手に入れて現在に至っている。


富嶽仙人の名前のわけ

 「富嶽仙人」という名を付けたのは3 年ほど前、パソコン通信のフォーラムに参加したのがきっかけである。とにかく富士山の近くに住んでいる人だと覚えてもらうのに都合の良い名前を付けたのだ。しかし、どうもこれ、じじくさい印象のようで、えらく年寄に勘違いされることがしばしばである。ちなみにまだ四十前なので念のため。

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なんで写真を撮るんだろう。

 なんで写真を撮っているんだろうってたまに考えるんだけど、答えがでないのでたいていすぐに考えるのをやめちゃう。僕は撮っているときが一番楽しくて、撮り終わってしまったフィルムにはあまり興味がない。だから現像があがって持って帰ったフィルムは未整理のまま無茶苦茶になってる。これで結構迷惑をかけることもあるので、ちゃんとしなきゃあいかんと思うのだけど、全然だめ。きっと、何かを記録しようとか、記念にしようとかそんなことは考えてなくて、単純に撮る行為が楽しいから撮ってるだけなんだろうなあって今は思ってる。  カメラがあるから花を探すし、遠くへ出かけるし、山へ登るし、寒い朝でも我慢して待つ。奇麗なものを見たい、奇麗な風景に出会いたいって気持ちが強くなる。そういう意味では僕はカメラに連れられて花を見に行ったり、山に登りにいったりしてるっていってもいいかもしれない。もっとカメラ君に感謝しなくちゃいけないかな。

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櫛形山へ

 そろそろ北アルプスも紅葉のピークを迎えるし、南アルプスだって稜線はもう・・と、思いはあっちこっちへ飛んでいる。ただし目の前には富士山がある。だから、どうしてもそれに後ろ髪を引かれてしまうのだなあ。
 先日は櫛形山(山梨県)へ出かけた。櫛形山には富士山撮影ファンには有名な二つのポイントがある、ひとつは増穂町と早川町奈良田を結ぶ丸山林道で、もうひとつは、そこから分岐している櫛形林道である。この日はまず櫛形林道へ、もうそろそろ空が明るくなってくる時間で、まあ真面目な富士山写真家なら遅刻の時間だ。もちろんもう先客は来ている。ここは街の明かりが見えてそれを富士山と組み合わせられるというところがナイスなとこなんだけど、ちょっと雲が高くて富士山は頭だけしか見えない。空はどんどん明るくなっていて見事な朝焼けも始まったが、あの雲の向こうがいいのにという隔靴掻痒状態。しまったあ、丸山林道まで上っておけばよかったねと思うも後の祭り。
 その後丸山林道を登っていく途中でワゴンに乗ったカメラマンとすれ違って「今日はよかったねえ」と声をかけられ「そうですねえ」と生返事したが、ちくしょう自分も登っておけばとちっとばかし悔しかった。
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丸山林道の富士見地点から、朝の光がまぶしい


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彩雲―思いがけないプレゼント

 朝の撮影はひとまず完了。でも折角ここまできたのだからと櫛形山に登ることにする。櫛形山にはこの辺りの林道のあちこちから登山ルートが延びている。山頂までの距離が一番短いのが、丸山林道から分岐する池の茶屋林道の終点からのルートで一時間もかからない。この林道からは白峰三山(南アルプス)もまた見事だ。
 櫛形山はアヤメの山として有名で、花期の7月には多くの登山者、観光客でにぎわうが、今はシーズンオフでひっそりとしている。駐車場には先客が一台。こういう雰囲気もまた良いものだ。
 登山道の両側にはトリカブトが目立つ。マツムシソウもまだ少し残っている。しかしもう全体としては・・・すっかり秋だ。下を見ればあちらこちらにキノコが出ているのに気がつく。知識が無いので捕らないけれど、きっとほとんどは食用になるはずだ。秋は恵みの季節。リスが目の前の樹を駆け登っていった。
 裸山まで足を伸ばした帰り、山頂で一休み。定年を過ぎ悠々自適と思われる老夫婦が休憩中だった。四国からでてきてこの付近の山を次々歩いており、前の日には茅ヶ岳、明日は鳳凰へ向かうそうだ。少し話してから、お気を付けてと声を掛け合って別れた。この日の山歩きで出会ったのは、この御夫婦含め数人で、とても静かな山歩きだった。

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小さな、小さな、実りの秋
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富嶽仙人
 昭和38年生まれ
 富士宮市在住
 信州大学在学中に山と自然と写真に目覚める。
 富士宮市に移住後も富士山を主たる対象として写真活動を継続中。


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