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【フサザクラ】(フサザクラ科)

毎年暮れになると、年賀状をどうしようか、いろいろ思い悩む。
スケッチを始めて数年たった頃から、賀状にスケッチを取り入れた。
最初はすべて手描きで彩色まで行ったが、30枚程度であえなくダウンした。
残りのはがきは文字だけになってしまった。

翌年はプリントゴッコを買ってきた。
線画を印刷しておいて、彩色は手で行う方式である。
なるべく干支に因んだ植物を描くようにした。
ただし、「謹賀新年」などの文字は筆ペンで書く。
これがしばらく続いた。
しかし、この方式でも6〜70枚が限度である。

そこで、昨年はついにパソコン印刷に切り替えた。
枚数としてはさほど増えてはいないのだが、官製はがきは色の乗りが悪くて、毎年ストレスを感じていたことも切り替えた理由である。
スケッチをスキャナで取り込んで、文字もパソコン印刷にした。
ちょっと手抜きかなとも思ったが、意外と好評であった。
既成の図柄ではない、手で描いた感覚が出ていたことが良かったのかも知れない。

昨年の賀状にはフサザクラを登場させた。この絵と同じものである。
別に干支にこだわらなくても良いと思った。
まだ寒い中で咲いているフサザクラは、「春」を感じさせてくれる花だ。
観察会などでも人気が高い。これも選定理由の一つである。

このスケッチは、丹沢山塊の麓、丹沢林道の途中に咲いていたものを描いた。
フサザクラは多摩丘陵にはほとんど見られず、高尾、丹沢などの周辺の山へ近づくにつれ、出現してくる。
主に、沢筋に生える。
花は3月、まだ他の樹木が固いつぼみをいつ開こうか迷っている時期に、いち早く咲く。
花、といっても花びらは無い。
赤いおしべが房状に飛び出している。フサザクラと命名された所以である。

名前から、サクラの仲間と早とちりする人もいるが、分類上ではサクラとは縁もゆかりも無いことになっている。
樹皮の色合いがサクラ似ていることから、昔の人はサクラの類と思ったらしい。
現在の分類学は、花の構造を中心にして類縁関係を洗い出しているが、それとても人為的な分け方にすぎず、極端にいえば「思い込み」である。といったら怒られるかな。
幹を見てサクラの仲間と判じた昔の人を笑うことはできない。

マイフィールドにもフサザクラはある。
稲城のフィールドに詳しい植物仲間に話したところ、「え、まさか」とか「いや、フサザクラはここでは見たことがない」などの反応が返ってきた。
しかし、私は知っている。1本だけあるのだ。
場所は、穴沢天神へ登る女坂の途中である。

穴沢天神のフサザクラをスケッチしたいと思い、前前からねらっていたのだが、タイミングが悪いのか、日当たりのせいなのか、花は見たことがない。
そうこうするうちに枯れてしまった。
稲城にたった1本しかなかったのに残念な・・・と思っていたら、根元から新しい幹が出てきた。花が咲くのは何年後なのだろう。
ガンバレ、稲城のフサザクラ!!