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【タマノカンアオイ】(ウマノスズクサ科)

私がフィールドへ出るときのいでたちは、我ながら異様かもしれない。
着ているものは、山ヤ系というか、アウトドア派というか、まあ、普通だろうと思う。
ただし、ベストは必ず着込んでいる。ポケットがたくさんあって、実に機能的である。
食料品などが入ったザックも、とりたてて言うほどのことも無い。

怪しく見えるのはこれからで、いろんなものをぶら下げるのだ。
・図鑑数冊を収納したショルダーバッグ。
・大き目のウエストバッグ。
・ケースに入ったルーペ。
・小型の巻尺。
・双眼鏡。
・ナイフ。
・喫煙具一式が入った小型ケース。
最近では、これにGPS(衛星電波を使った位置測定器)も加わった。
夏には、小型のペットボトルもある。

スケッチ行の場合は、道具一式が入った手提げ袋、携帯椅子、三脚を持ったり、ザックにくくりつけたりする。
冬芽観察の時は、4.5mに伸びる「如意棒」と、枝きり用のアタッチメントも加わる。
自分でもおかしいのを通り越して、身動きできないほどだ(^_^;)

小道具類はまとめてザックにしまいこめばすっきりする。初期の頃はそうしていた。
図鑑などのかさばるものはザック、小物はポケット、という具合だ。
しかしザックの場合は、一々降ろさないと取り出せない。
ポケットに入れると、いつのまにか無くなってしまう。
ルーペも、語れば長くなるが、いくつ無くしたことか。
簡単に取り出せて、かつなくさない、という命題に対する解は、ぶら下げることであった。
かくて珍奇なスタイルが定着したような次第である。

さて、タマノカンアオイ。
「葵のご紋」に使われたフタバアオイの親戚で、多摩丘陵特産であることから、そう名づけられた。
ちょっと厚い葉と、ラフレシアを小型にしたような花が特徴だ。
光を斜めに当てて透かすように見ると、産毛が生えている。
花期はだいたい4〜5月だ。1ヶ月ほど咲いている。

タマノカンアオイは、雑木林の中、群生することは稀だが、点々と生えている。
このスケッチは妙見尊(アケビの項参照)で描いた。
筆塚と呼ばれる石碑があり、石垣が組まれている。
その石垣の上にあったものだ。

石垣は胸の高さよりちょっと低い。
腹這いにならなくてもうまくスケッチできる位置である。
これはありがたい、と思ったのだが、椅子に掛けたのでは高すぎる。
立って描くには低すぎる。
結局、中腰で、石垣に肘をついて描く姿勢になった。

気が付いてみたら、椅子も三脚も使っていない。
図鑑もルーペも巻尺も必要なかった。
重い荷物を担いできたのに、使ったのは弁当くらいだ。
中腰の辛さも加わって、どっと疲労感が増した。

しかし、椅子も三脚も使わずにスケッチできる足場はそうそうあるものではない。
すごくラッキーだったのだ・・・そう思うことにした。