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【ノコンギク】(キク科)

このスケッチを見て、今までの絵とタッチが違うと感じられた方は、スルドイと思う。
ユウガギクと比べていただくとはっきりするが、この絵には輪郭線がほとんど描かれていないように見える。
新境地を切り開くため、あえて従来の手法を捨てた・・・わけではない。
私自身、こういう仕上がりになって、いささか困惑しているのだ。

こうなった原因はコピー機である。
私のスケッチは、最初に線画を描き、それを画用紙へコピーしたものに彩色する・・・とは何度か書いた。
多摩川の河原でノコンギクを描き、それを持ってコンビニへ走ったところまではよかった。
コピーしてみると、コピー機のトナーが切れかかっていて、かすれたような線しか出ていない。
いつも2枚コピーするのだが、2枚とも同じ調子だ。
生憎、B6サイズの画用紙はその2枚で終わりだった。

やむを得ず、かすれた線の上から彩色した。
ところが、いつもとは勝手が違う。
花はほとんど彩色の必要はない。問題は葉だった。
線で囲まれた中に色を塗るだけではすまない。
それだと輪郭がぼけてしまい、空気との境がわからなくなってしまう。
輪郭の存在を色で表現するのは初めてだったので、戸惑いがあった。
輪郭を塗ると、内側との色バランスが崩れる。

いままで、輪郭線のおかげで、彩色はかなり手抜きができていたことを知った。
いや、手抜きという言葉は適切ではない。
輪郭はペンで描く、という方式であり、そのため線画に彩色と同等以上の時間をかけていたのだ。
両者のバランスの問題かもしれない。

いわゆるボタニカルアートと呼ばれている絵は、輪郭を描かない。
制作の過程では鉛筆などで薄く線を引いているが、仕上がりでは線が見えないようにしているようだ。
油絵などの洋画も輪郭線を描くことはほとんどない。
私の絵は、以前、南山でスケッチ中に出会った人から、「日本画の手法ですな」といわれたことがあった。
そういえば、日本画は墨で輪郭を描いている。
マンガも「輪郭派」だ。
子供のころ、図画は嫌いだったが、鉄腕アトムやヒゲオヤジをよく描いていたことを思い出す。

ノコンギクについては、ユウガギクの項でも触れたが、冠毛があるのでそれを確認すれば他に間違いやすいものはない。
ただ、冠毛を見るためには花をむしる必要があるため、ちょっと抵抗があった。
今では、乾燥した場所にあればノコンギクと見当をつけ、葉で確認する。
葉はカントウヨメナと似ていても、触ればざらざらするのですぐわかる。
「えっと、ざらざらはどっちでしたっけ」という質問には「ヨメサンすべすべ」だ。

私は自分の絵をボタニカルアートとは思っていない。
スケッチという言い方をしているのは、そういう意味もある。
しかし「スケッチ」も、法廷場面のスケッチのように、さささ〜っと描くような印象が強いような気がするのである。
かといって、細密画(a miniature)というのも気が引ける。
なにか良い言葉はないものだろうか。
日本語でいえば「植物形態模写」ではないかと思うのだが。
やはり「スケッチ」しかないのかもしれない。