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10月5日 南岳へ 天狗池から一段登ったあたりがちょうどナナカマド紅葉のピークだった。ここは大きな岩の間にナナカマドが点在して見事な庭園となっている。もちろん人の手が加えられたものではなく自然そのもののの風景である。
なぜ自然は美しい造形をつくるのだろう。それとも人間そのものが自然から作りだされたものだから自然の作った造形を美しく感じるのだろうか。そうすると今後遺伝子操作された人間が増えてくると自然を美しく感じない人が増えてくるのかもしれないなあ。
横尾尾根に登れば、眼前に北穂。眼下にはナナカマドの紅葉。横尾谷の向こうには錦繍、絢爛たる屏風の姿。東に目を向ければ、蝶、常念、大天井、燕と連なる稜線。午後になっても天気の崩れはなく、それらの山並の色づいている木々の様子までしっかりとわかる程だ。そんなこんなで、標準コースタイムで4時間程のところを、なんと8時間以上もかけて、南岳に到着した、ふぅ。
横尾尾根から蝶・常念山脈を望む
ここで、いままで見えなかった西側の展望も開ける。笠ケ岳が目の前。双六、三俣蓮華へと連なる稜線も秋色。夏は歩いたことがあるのだが、この季節は無い。
「来年はあのあたりへ・・・」
早くも計画を立てたりしてしまう。
フイルム交換をしようとして未使用フイルムを確認すると、なんとまあ、あと2本しかないでないの!。まだ今日の夕方と明日の朝の撮影を残しているのに・・・完全に「フイルム切れ」である。大失態(恥)。
仕方がないから小屋でコニカのネガフイルムを購入する。この山域の山小屋にはコニカのフイルムしか置いていないのだ。24枚撮り1本で600円(泣)
日が西に傾きかけた頃にスタンバイ。日の高いうちから動けるほどフイルムが無いのだ。小屋近くで、北穂を中心に狙う。上手い具合に雲がキレットを乗っ越していく。
「こりゃいいぞ」
午後の低い日差しが滝谷の岩壁にコントラストをもたらす。
「穂高に惚れ直しそう」
南岳が最近カメラマンのメッカになっているのもうなずける見事な山岳風景が展開する。
南岳小屋付近からの北穂高岳
小屋の宿泊人数は少ないはずなのに、あたり一帯かなりの三脚の数だ。小屋泊り客のほとんどがカメラ人なのかもしれない。もちろんペンタ、ハッセル、マミヤ等の中判カメラを携える本格派も多い。御苦労なことである。
今日で今年三回目の撮影チャレンジという60歳過ぎの男性。前夜、埼玉から車を飛ばして新穂高から一気にここまでとのこと。前回中型カメラを持ち上げてバテたので今回は35mmだけとおっしゃっていたが、お見事な体力である。
残念ながら滝谷とキレットを乗っ越す雲の染まりが最高潮となるはずのところで、太陽が厚い雲のバンドに入ってしまい不完全燃焼。光の弱まった大きな夕日が笠ケ岳の左に没した。北穂山頂の小屋の灯が見えはじめる。群青の空にはハーフムーン。カメラマンが全員引き上げたあと、僕は穂高をスローシャッターでもう一枚。おやすみ、そしてまた明日もよろしく。
笠ケ岳と夕日 南岳小屋付近
僕以外のテントは1張りだけ。夜のとばりが下りると、もちろん気温は氷点下。再び外に出て星と穂高の写真を撮ることはできるが寒い、それにフイルムも無いし・・・で、寝る。風力発電機が時折強風でうなり声をあげるので結構うるさい。
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