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めはり寿司を食べ終え、本宮から一路十津川を目指す
はるか昔、母方の親戚が十津川の村長をしていた関係で、村長さんから「十津川は秘境だ」と毎回会うたびに聞かされていた。十津川沿いに走り、ニ津野ダムに出るとおだやかな水の風景が広がっていた。ニ津野ダムにある十津川温泉の手前を西川沿いに入ると、まもなくキャンプ場が見えてくるが、このキャンプ場と隣接して「野猿」という珍しい乗り物がある。「野猿」は人力ロープウェイで、川の両岸に張ったワイヤーに“やかた”を吊り下げ、自分で引き綱を手繰り寄せながら渡るもの。猿がつるを伝って渡っていく様に似ていることから、「野猿」と呼ばれている
それにしても十津川の道は舗装されているとはいえ、カーブは多く、時間がかかる割には距離は稼げない。東京オリンピックや大阪万博あたりは確かに秘境であったろう
風屋貯水池を通過すると、水量の少ない十津川がまた始まる。道沿いに走ると沢山の車が集まっているのに気付いた。上野地に着いたのだ。ここには谷瀬の吊橋という、長さ297メートル、高さ54メートルに及ぶ大きな吊り橋がある。ゆらゆらゆれる吊り橋は、他の人が渡ると下を眺める余裕もない程に大きく揺れる。渡りきるまでおよそ5分かかる。こればかりは渡った人にしかわからない、スリルを超えた感覚である。写真でもその揺れは、被写体ブレとして写っている。少しは実感していただけるだろうか
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