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祖谷渓(いやけい)の上流にあたる西祖谷山村善徳と東祖谷山村は奥祖谷の祖谷川に「かずら橋」がある。奥祖谷の「かずら橋」は剣山を西祖谷に向かって下る途中にあり、こちらは観光客も少なくひっそりとしているが、西祖谷の「かずら橋」は多くの人出で賑わっている
ところで「かずら橋」の名の由来は、「葛」を使って出来た橋、つまり植物のつるで出来た橋ということからきている。地元でシロクチカズラと呼ばれているものだ。しかしカズラというとカエンカズラではないが、南方系の植物が多く、とうてい橋の材料となるとは思えない。実際シロクチカズラという名称の樹木や野草は存在しない。このシロクチカズラと呼ばれる植物の正体だが実はサルナシでマタタビの仲間である。サルナシの別名はシラクチヅルだ。シラクチヅルで作る葛からシロクチカズラとなったのだろうが、少なくとも「カズラ」という表記はいただけない。せめて「かずら」と平仮名にしてもらいたいものだ。西祖谷の「かずら橋」は3年に1回架け替えられる。材料となるサルナシは東祖谷の国有林のサルナシを冬場に採取して加工するのだが、この予算は西祖谷山村が負担していて、現在は入札により「かずら」の製作を依頼しているようだ。その中には個人の方も含まれている
しかし、通行料500円を払って「かずら橋」を渡る人々を眺めていていると、日本人にとって「橋」に対する想いとはなんなのだろうか..という疑問が湧き上がる。川に架かる単なる通路に過ぎないのに、錦帯橋、明石大橋はもとより、橋は観光名所になるほどに人々を惹きつける。橋の上から眺める川や海の風景が魅力的なのか、それとも空中に浮く、浮遊感に惹かれるのか..なんとも不思議な存在だ
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