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鍾乳洞といえば、東京は奥多摩の日原鍾乳洞程度の規模しか体験していなかったので、はじめて秋芳洞(あきよしどう)を訪れた時、正直、洞窟の中の大きさに驚いた。なんだかインディジョーンズみたいな映画のワンシーンに使えるなぁぁ..と
確かに秋芳洞は素晴らしい鍾乳洞だったが、僕の心はもっと別のものに惹かれていた。それは秋芳洞に向かう途中の土産店の通りの入り口付近に面した、猫の額ほどの小さな田んぼだった。季節は8月のお盆近く、稲穂の緑がまぶしいくらいだった。その小さな畦道を歩くと、稲穂の中をマムシがゆるゆると歩んでいる。ほほぉぉ、こりゃ農薬を使っていない田んぼかもしれない。そこで幅30cmに満たないほどの水路を覗き込むと、いたいた、小さな魚達がメダカの学校状態。しかしこの水路は秋芳洞から流れてきた水である。メダカが棲むには、少し冷たすぎるかもしれない。季節からして、おそらくメダカ以外の稚魚だろうと、子ども達と一緒に網で魚をすくい捕り、東京の自宅まで持ち帰ることにした。魚は、車が上に載っても潰れないという、キャンプ用飲料クーラーに入れた。真夏の車の中で水温を上昇させないためだ。さらに帰路の途中、ペットショップでエアーと中和剤を購入し、水替えや空気の補充をマメにおこなったので、自宅に到着した段階でも、かなりの魚たちは生きていた。60リッターの標準水槽に移し、飼育をはじめ、冬になる頃には稚魚もかなり大きくなってきた。どうやらモロコの仲間のようだ。モロコの同定は僕には難しく、タモロコ??、ひょっとしたらカワバタモロコかも..と..毎日魚達を見るのが楽しみだった
そんな真夏の思い出の場所に立ってみた。田んぼは、もちろんからっぽ。水路も水は入っていない。祭りの後の寂しさは..思わず拓郎の唄を口ずさんでしまった
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