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国内最大規模のカルスト台地である秋吉台の草原は、2月の第3日曜日に野焼きが行われる。もっとも実際は天候により3月上旬頃まで延期されることのほうが多い。秋吉台は元々草原だったわけではない。今から650年ほど前までは針葉樹の原始林だったといわれる。草原は人が手を入れないと維持はできない。放置したままだと笹や樹木が繁殖して、すぐに薮化してしまう。また新しい草の芽を育てるためにも枯れた草を始末する必要がある。翌年の草原を作り出すためにも野焼きは必要なのだ。現在も草原の野焼きが行われている場所は、秋吉台の他に久住高原と三瓶山があげられるが、三瓶山の野焼きは復活してからの日はまだ浅い。野焼きすることで植物や昆虫の生態系にも特徴が出てくる。3月に入ると太陽の光を好むノジスミレやアマナが咲き始め、4月も過ぎるとワラビがたくさん生える。6〜7月には、今では絶滅危惧種A類となってしまった、オオウラギンヒョウモン蝶の貴重な姿も見られ、秋にはハギやリンドウ、センプリ、ウメバチソウたちが主役となる
野焼き跡、まだ緑の気配のない秋吉台は、磐梯吾妻の浄土平のように、かなり殺伐としている。夏の緑豊かな表情との落差が面白い。僕等は試験の解答を見るように、夏の美しい草原を当たり前のように受け入れているが、その草原を維持するために、これだけの規模の野焼きを安全に行うには、相当の人手が必要なはずだ。地元の方達の努力に頭が下がる
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