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ハリヨの棲む川が琵琶湖の近くにあるという
天然記念物に指定されているハリヨはトゲウオ科の魚でイトヨの仲間だ。この魚は絶滅危惧種にあげられるほど、生息地域は限定されている。湧水のある、限りなく水のきれいな場所でないとハリヨは生息できない
琵琶湖は堅田にある、昆虫写真家の今森さんのスタジオを訪ねた帰りに、ハリヨの棲む川を訪れてみようと思った。しかし川の名も、また正確な地域もメモしていなかったので、琵琶湖東岸、近江八幡周辺の川を、ほぼくまなく探してみたのだが、どの川もおせじにもきれいとはいいがたく、とてもハリヨが棲めるような川ではなかった。結局、ハリヨ探訪は諦め、自宅に戻ることになってしまった
帰宅して、さっそく宿題となった川とその場所を調べ直すと、琵琶湖よりも、もっと岐阜に近い米原町醒井(さめがい)の地蔵川であることが分かった。これだけ琵琶湖から離れていては見つけられなくても当然だった
それから数年が過ぎ、リベンジすべく、7月の醒井は地蔵川に出かけたのだが、実のところ、この時もすんなりと地蔵川には辿り着けなかった。資料に出ていたイラストを頼りにカーナビの地図に表示されている川を目指してみるものの、どうも雰囲気が違うのだ
醒井は旧中山道醒井宿であることを思い出し、きっともっと町中のはずだと、目星をつけた町並みの路地に入り込んでみると、そこが地蔵川の始まりでもあり、水が湧き出ている加茂神社、居醒の清水だった。湧き出る水をボトルに詰めている姿も見られる。間違い無い。ここにハリヨはいるはずだ
居醒の清水から流れ出た水は、地蔵川となる。川下の左岸は地域の人々が住む家が立ち並び、右岸は道路を挟んで宿場がある。いや江戸時代は確かに宿場だったが、現在はレトロな風情の店舗が立ち並ぶ。コンクリートの護岸こそないが、川はきちんと整備され、岐阜は郡上八幡の水路のような雰囲気。なにしろ勝手の戸を開けると、そこはもう川なのだ。つまり川は自宅の一部でもあり、この水を利用できるように工夫され、庭を飾るように、花も添えられている。この地域の方々の地蔵川への愛をヒシヒシと感じる。なんともうらやましい
バイカモの白い花が川の流れに身をまかせている
じっとそのバイカモを見つめていると、ふいに黒い影がバイカモを横切った。ハリヨだ。しばらく観察していると、何回か、すっすっと泳ぐハリヨの姿を見ることができた。醒井は、人とハリヨが共存している。比較して、日本の多くの川は生活廃水を垂れ流すドブ川ばかり。今から30年前までは、東京近郊でも、あれだけ見かけたメダカすら、絶滅しかけている。わずか30年で失ったものは、取り返しのつかないほどに大きい
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