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伊香保温泉は石畳の階段沿いに、ひなびた懐かしい店が建ち並ぶ
この石畳を上り詰め、右側の道に沿い、湯元治山公園に向けてのんびりと散歩をしていると、煎餅屋がぽつんとあった。僕は手焼きの塩煎餅には目がないので、さっそく店内に入ってみると、おじさんが焼いていた煎餅は塩煎餅ではなく、いわゆる瓦煎餅のような煎餅だった
神戸の瓦煎餅や福岡のにわか煎餅は、小麦粉、卵、砂糖をこねてから蒸し、乾かしてから、鉄の焼き型で焼いた煎餅で、粳米をこね、乾燥させてから、醤油と砂糖を塗り、網の上で焼いた塩煎餅とは、同じ煎餅といっても、随分と見かけも味も違う
店内には山椒のいい香りが漂っている。おじさんに尋ねると、この店で作る煎餅は「さんしょ煎餅」といって、山から採ってきた山椒の葉を、そのままの形で焼きこんだものなのだそうだ。1枚1枚、おじさんは実に丁寧に焼き上げていく。その真剣なまなざしを見ると、やはり食べてみたくなるのが人情だ。しかも1枚40円と随分安い
さっそく、おじさんに1枚分けてもらい、口の中にほうばると、ぷ〜んと山椒の心地よい香りが広がり、適度な甘さとサクサク感のバランスが絶妙。これはウマイッ。土産用にさっそく購入、散歩の続きをし始めると、道沿いに立派なヤマユリが1輪咲いていた
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